湯量の多い源泉に入りたい。

湯口から流れ続けるお湯を見ていると、その源泉でどれだけの湯が湧いているのかが気になります。湧出量は、泉質やpHと並んで源泉の個性を表す数字です。
今回は、毎分6,000リットル以上の湧出量が公表されている源泉と、その湯に入れる東北の3軒を紹介します。調べてみると、3つの源泉には共通点がありました。どれもpH2.2以下の強い酸性で、どれも活火山のふもとに湧いています。
湯量の多い源泉は、なぜ酸性なのか
火山の地下では、マグマから二酸化硫黄や塩化水素などの火山ガスが出ています。これが雨水から来た地下水と混ざると、酸性の熱い水になります。産業技術総合研究所は、酸性の温泉を、こうしてできた酸性の水が地下を流れる途中で周りの岩を溶かし込んで生まれるものと説明しています。
熱と酸の供給源のすぐそばで、山に降った大量の雨水が温められて湧き出す。火山のふもとに、熱く、酸性で、量の多い源泉がそろうのはこのためと考えられます。今回の3つの源泉も、須川高原温泉は栗駒山、沼尻元湯は安達太良山、玉川温泉は秋田焼山と、いずれも気象庁が常時観測している活火山のふもとにあります。
強い酸性の湯は、肌への刺激も強めです。湯量の豊かさとあわせて、その刺激の強さも知ったうえで湯に向かいましょう。
1. 須川高原温泉
標高1,126m、栗駒山の中腹。須川高原温泉では、48〜52℃の湯が毎分6,000リットル湧き出しています。公式サイトの換算では、ドラム缶30本ほど。1分ごとにそれだけの湯が、雲の上に近い山の中で湧き続けています。pHは2.2の強酸性で、源泉ランクは5です。
浴場は4つ。30〜50人が入れる大露天風呂「大日湯」、木造りの大浴場「須川の湯」、10人ほどの内湯「霊泉の湯」、小さな木造の小屋の蒸気風呂「おいらん風呂」です。須川の湯と霊泉の湯は24時間入れるので、夜更けや夜明けの湯にも浸かれます。
宿は須川の魅力を五感で語っています。沢のせせらぎ、エゾハルゼミの蝉時雨、岩つばめのさえずり、木々のあいだに漂う硫黄泉の香り、そして高山植物。湯から上がったら、湯川沿いのトレッキングや栗駒山への登山にも出られます。登山の前には、岩手県が出している火山ガスの情報を確かめてください。禁忌症には「皮膚又は粘膜の過敏な人」が挙げられています。
2. 中ノ沢温泉 御宿万葉亭
中ノ沢温泉は、安達太良山の西麓、標高1,000mの高原にある温泉街です。御宿万葉亭の湯は、約7km離れた沼尻元湯から引かれています。源泉の湧出量は毎分13,400リットル(2009年10月の調査)。源泉付近で約80℃の湯が、湯口に届くころには50℃前後まで下がっています。
泉質は硫化水素を含む強い酸性で、pHは1.85。それでも宿は、7kmの引き湯のあいだに硫黄臭はほぼ消え、「シルクのようなサラサラの肌触り」になると案内しています。強酸性という数字から想像する湯とは、少し違う姿です。加水・加温・循環なしのかけ流しで、源泉ランクは5です。
湯船は檜、床と壁はヒバの総木造り。普段は透明な湯が、源泉付近での湯の花の採取や雨などで、年に数回、乳白色に濁ります。7km先の山の天気が、宿の湯の色に表れる。源泉とのつながりを、湯船で感じられる宿です。
3. 玉川温泉
98℃の湯が、毎分9,000リットル。秋田焼山の西麓にある玉川温泉の源泉は、白煙をあげ、音をたてて熱湯を噴き上げると宿は案内しています。湧いた湯は、そのまま幅3mの川になって流れていきます。
泉質は塩酸を主成分とする強酸性で、仙北市はpH1.1と紹介しています。今回の3つの中で、最も酸性の強い湯です。大浴場は酸性に強い青森ヒバ造りで、11種類の浴槽があります。源泉100%の浴槽は刺激が強いためぬるめに調整され、源泉50%の浴槽や弱酸性の浴槽もあります。湯の濃さを選びながら入れるのが、この大浴場の特徴です。源泉ランクは4です。
岩盤浴でも知られ、病後の療養で長く滞在する湯治客も多い温泉です。日帰り入浴は10時から15時まで。国道341号には冬季に交通規制となる区間があるので、冬は道路情報の確認が欠かせません。
まとめ
雲の上に近い山で毎分6,000リットルが湧く須川、7km先の源泉から毎分13,400リットルの湯が届く万葉亭、毎分9,000リットルが川になって流れる玉川。湧出量は源泉全体の値で、一つの浴槽に注ぐ量ではありません。測った時期も違うので、順位はつけられません。
3つに共通するのは、火山のふもとで生まれた強い酸性の湯だということ。湯量の数字の向こうに火山の姿を思い浮かべながら、刺激の強さも頭に入れて湯に向かってください。