川や湖の底から湧くお湯に入りたい。

川の流れの中や、湖の底から、温泉が湧いている場所があります。河原をスコップで掘ると、その穴にお湯がたまっていく。湖の中から湧いたお湯が、湖畔の宿の湯船に注がれている。どちらも、いまも入れるお湯です。
今回は、川底から湧く和歌山県の川湯温泉から2軒、湖の中から湧く鳥取県のはわい温泉から1軒を選びました。3軒とも源泉ランクは4以上で、源泉かけ流しのお湯を使っています。温泉がなぜ水の底から湧くのかを知ると、河原や湖の見え方が変わります。
温泉は、なぜ川や湖の底から湧くのか
神奈川県温泉地学研究所の解説を借りれば、温泉は、地中にしみ込んだ雨や雪が地下水となり、地下の熱で温められたものです。温められた地下水は、断層などの自然の割れ目や、人が掘ったボーリングを通って地表に湧き出してきます。
お湯が湧く出口は、陸の上にあるとは限りません。割れ目の出口が川底や湖の底にあれば、お湯は水の中から湧きます。熊野本宮観光協会の言葉では、川湯温泉は「川底を掘ればたちどころにお湯が湧く」温泉地です。鳥取県の観光サイトをたどると、東郷池でも江戸時代から湖の中に温泉が湧くことが知られていました。
水の底から湧くお湯は、そのままでは川や湖の水と混ざってしまいます。川湯の河原で湯だまりを掘ったり、冬に川の中に大きな湯船を仕切ったりするのは、お湯と川の水の混ざり方を人の手で加減するためだと考えられます。
1. 民宿 すみ家
「大塔川から湧き出る温泉をお楽しみ下さい」。和歌山県田辺市、川湯温泉の民宿 すみ家が、目の前の川を指して書く言葉です。宿の前の河原では、お湯が湧き出ている場所をスコップや鋤簾(じょれん)で掘って、自分だけの露天風呂をつくれます。解説で触れた、掘ればお湯が湧く河原です。源泉ランクは4です。
河原には、3月から造り付けの露天風呂「薬師の湯」が現れ、12月から2月末までは、長さ約40mの大露天風呂「仙人風呂」が出現します。春は桜が舞う中で、夏は川遊びをしながら、秋は紅葉の中で、そして一年を通して星空を眺めながら。季節ごとの河原のお湯を、宿はこう描きます。宿のお風呂も源泉かけ流しです。
宿の風呂は15時から翌朝9時まで入れます。河原の湯だまりは、夏の川遊びの合間にも、宿の湯船に入る前にも掘れます。お湯が湧く場所をどこまで掘るかで、自分だけの湯船の大きさも決まります。
2. 川湯温泉 山水館 川湯まつや
同じ川湯温泉の山水館 川湯まつやは、冬の名物「仙人風呂」のすぐそばに建つ宿です。宿の紹介では、仙人風呂は、川底から湧く約65度の温泉に大塔川の清流を引き入れ、40度前後に調整した露天風呂です。熊野本宮観光協会は源泉を73℃としていて、数字は少し違いますが、川底の熱いお湯を川の水で冷ましている点は同じです。源泉ランクは4です。
宿のお湯は、自家源泉から湧き出す豊富な湯量を使っています。泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉で、中性のお湯です。すみ家が河原を掘る楽しみを勧めているのに対し、こちらは館内の湯船で、川湯のお湯にゆっくり浸かれます。
館内の風呂は朝5時から深夜0時まで(清掃は10時から14時)。仙人風呂は12月から2月末までで、入浴料は無料です。水着を着て入り、石けんやシャンプーは使えません。星空の下の仙人風呂と、館内のお湯を行き来できるのは、冬に泊まる人だけの楽しみ方です。
3. はわい温泉 民宿鯉の湯
鳥取県湯梨浜町、東郷池のほとりのはわい温泉にある民宿 鯉の湯は、「東郷池の中から湧き出る温泉」を使っています。湖の中から湧くお湯なので、日によっては泥が混ざることもあります。川湯の2軒が川底のお湯なら、こちらは湖の底のお湯です。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。源泉ランクは4です。
お湯は「源泉掛け流し、加水無しの自然のそのままの温泉」で、完全放流式のかけ流し。消毒や殺菌の必要がないとして、塩素消毒も一切していません。お風呂は男女別の館内大浴場と、男女入れ替え制の露天風呂の3か所です。
露天風呂は、男性が15時から19時、女性が19時から23時。朝は6時から、先着順の貸切風呂になります。泥が混ざる日のお湯は、湖の底から湧いたお湯だという印です。家族で営む小さな民宿なので、お湯の様子は宿の人に聞いてみてください。
まとめ
河原を掘って自分の湯船をつくれるすみ家。冬の仙人風呂のそばで、館内のお湯にも浸かれる川湯まつや。湖の中から湧き、日によって泥が混ざる鯉の湯。3軒のお湯は、どれも水の底にあるお湯の出口から届いています。
河原のお湯や仙人風呂は、川の水と混ぜて温度を加減しているお湯です。場所によって熱さが違うことがあるので、入る前に手で温度を確かめてから、ゆっくり体を沈めてください。